ヒト・モノ・コト

友野和哲さん

/関東学院大学・理工学部 准教授

友野和哲さん

/関東学院大学・理工学部 准教授

関東学院大学・理工学部の友野和哲准教授は、本業の研究職、学生の教育に邁進しながら、地域活動、社会貢献活動にも積極的に参加している、ちょっとユニークな先生です。研究職でありながら、横浜市金沢区での地域活動に関心をもった経緯を伺いました。

友野先生の研究分野は電気化学、分析化学、リサイクル工学。エネルギーの創生と貯蓄を大きなテーマに、分野横断的な研究活動に携わっています。研究の2本柱となっているのが、「太陽光パネル製作過程で出るシリコン切削屑をブロモシランという物質を用いて回収し、再利用する研究」と、「金属錯体等の機能性分子を層状化合物に導入し,それらの協奏的効 果によって新機能や機能性向上をはかり,キャパシタなどに応用する研究」。100%文系脳の私には正直チンプンカンプンですが……。

「今、世界的に再生可能エネルギーへの需要が高まり、太陽光発電が以前にも増して注目されていますが、その加工工程で原料となるシリコンの50〜60%が無駄になり、廃棄されている現状があります。それを廃棄せずに何とか回収して、再利用できないか? というのがひとつ目の研究課題。シリコンの切削屑には多くの不純物が混ざっているのですが、ブロモシランという液体を用いることで、シリコンだけを取り出すことに成功しました。取り出したシリコンはリチウムイオン電池の負極材料などとして再利用できます。

金属錯体は、金属と非金属の原子が結合した構造を持つ化合物のことで、組み合わせ次第で物性を変化させることのできるのが特徴です。この金属錯体を層状化合物の層間に導入し、層状化合物を含めた全体の物性を簡便に変更できることを明らかにしました。ハンバーガーのようなものを想像いただくと分かりやすいのですが……。ハンバーガーはバンズの間に挟む食材を変えると、味も栄養価も大きく変わりますよね? 金属錯体も同様で、中心金属や配位子(中心原子に結合するイオンや分子)の組み合わせを変えることで色々なカロリーをもった食材になり、バンズである層状化合物に挟むことで食材である金属錯体の性能を付与でき、キャパシタの性能(電気を充放電できる性能)など層状化合物全体に、人為的に理想的 な特性を付与できる可能性があるのです」

エネルギー分野に貢献しそうな研究ということは、ひとまず理解できました(?)。ところで、こうした研究と地域、社会はどのように繋がったのでしょうか?

「それが、実は全く関係ありません(笑)。以前、私の研究者生活が始まった東京理科大学
理学部や次の武者修行先の山口大学工学部に在籍していた時から、地域の人に化学を教えたりする機会はありました。また、初めて単独の研究室を持たせてもらった宇部工業高等専門学校物質工学科でも、学生たちと一緒に地域の子どもたちを招いて放課後学習教室を開いたり、商店街の活性化に取り組んだりする機会があったのです。私自身、もともと『研究活動以外で社会に貢献したい』という思いはあまり強くなかったのですが、そうした話が何故か自然に舞い込んでくる。運命のようなものを感じ、関東学院大学に来てからも機会があれば積極的に参加するようになりました」

横浜市金沢区での活動は、LINKAI横浜金沢(1300社を超える中小企業が集まる産業団地)の地元企業と、大学生の交流プログラム「Cross Meeting(クロス・ミーティング)」に参加したことがキッカケになりました。

「働いてみたい会社とはどんな会社か、どんな働き方をしたいか、といった、ざっくばらんなテーマで地域企業の社員さんと学生でディスカッションしました。学生達にとって、地域の社会人と会話する機会は貴重だったようで、とても勉強になった、という感想が返ってきたのです。研究者はともすると学内に閉じこもり、視野が狭くなりがち。地域企業の人など学外の人と交流することは、自分たちが普段、研究していることを社会の中でどう活かせるのか、イメージを膨らませることにも繋がると思っています」

昨年開催された「Aozora Factory(地域企業の魅力を伝える体験イベント)」では、「回折格子フィルム」という材料を使って、箱の中に虹を作り出すワークショップを学生とともに運営。イベント運営のノウハウ、子ども達に仕組みを説明することの難しさを学生達も学んだそうです。

「卒業後、研究を続ける者も、企業に就職する者も、学生時代に様々な経験をし、色々な引き出しを持つことが大きな糧となるはずです。社会で活躍できる人物に育って欲しいですね」

自分自身、様々なことに興味を持ってきたことが、現在の研究成果にもつながっている、と話す友野先生。化学の理学的視点、工学的視点の面白さを地域社会に伝える独自の活動に、これからも期待しています!

 

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